ヒブリス/アングラガルド

Hybris/ANGLAGARD

1.JORDROK 2.VANDRINGARI VILSENHET 3.IFRAN KLARHET TILL KLARHET 4.KUNG BORE bunus track: 5.GANGLAT FRAN KNAPPTIBBLE


1992年作

 長らく入手不可能であったアングラガルドの幻のファーストアルバムがこの「HYBRIS」である。この度めでたくリマスター&ボーナストラック付きで再リリースされた。待ってましたとばかりに即購入したが、噂に違わず素晴らしい作品であった。アングラガルドは後にセカンドアルバム「EPILOG」を1994年に発表し、同年のProg Festに出演した後に惜しまれつつ解散したのだが、その時のライブアルバムを含めて3枚のアルバムしか残していない。
 セカンドアルバムも「チエンバ−的暗黒感」を強調した素晴らしい作品であると思うが、このファーストアルバムは自分達の表現したいことを直線的に表現した作品で、アングラガルドの全てが詰まっている最高作である。彼らのサウンドを簡単に表現するならば、「初期ジェネシス的シンフォニックロックをゴシック風に表現している」といったところであろう。どちらかと言えばハードでダークな印象が強いが、ヘビーではない。
 アングラガルドのパーソネルはドラムのマテアス・オルソン、ベースのヨハン・ホルベルグ、ギターのヨナス・エンデグラッド、ヴォーカル&ギターのトード・リンドマン、フルートのアンナ・ホルムグレン、メロトロン・ハモンドその他キーボードのトーマス・ジョンソンの6人。専属のフルート奏者がいることと、ツインギターであるところが特徴であるが、演奏面でも印象的に使われるフルートの寂し気な旋律、アコーステックギターとエレクトリックギターのアンサンブルがメロトロンと絡む様はなかなかに官能的である。アングラガルドは基本的にキーボードのトーマス・ジョンソンのメロトロン&ハモンドによるサウンドクリエイトを中心にヨナス・エンデグラッドの癖のあるエレクトリックギターが絡み、強固なリズムセクションが変拍子で脇を固めるのが基本スタイルで、そこにフルートが印象的に挿入される。ヴォーカルはほとんどおまけ程度にしか入らず、完全にインストバンドの印象が強い。
 彼らは同じスウェーデンのバンド「アネクドテン」と比較されることがおおいが、両バンドともに「中世的な暗黒感があり全体的にダークかつ寂寥感に支配された北欧サウンド」を基調としながら、かたやアネクドテンが「クリムゾンライクなヘビーさ」を表現の中心にしているのであれば、アングラガルドは「ジェネシスライクな変拍子シンフォニック」をメインにしている。基本的なスタンスは両バンドともにかなり似ているので、どちらがより好きかはそのサウンドを聴く人の嗜好に左右される。クリムゾンが好きなひとはアネクドテンであろうし、ジェネシス系シンフォニックが好きなひとはアングラガルドを選ぶであろう。
 アングラガルドの暗黒感・寂寥感・ダークな雰囲気を引き出しているのがメロトロンである。キ−ボ−ド奏者でバンドの中心人物であるトーマス・ジョンソンはメロトロンとハモンドオルガンをメイン楽器として駆使してこの世界観を90年代に確立した。最近のプログレ新人バンドはことさらにメロトロンを使いたがり、クレジットにも使用楽器としてメロトロンを書きたがるが、100%使いこなしているかと言えばそうではないことが多い。その中で、トーマス・ジョンソンはメロトロンの個性を見事なまでに引き出しきっている演奏者にひとりであると思う。
「HYBRIS」は「メロトロンを聴くためのアルバムである」と言ってもよいほどの作品なのだ。

Tomas Jonson:key
Jonas Engdegaro:g
Tord Lindman:vo. g
Johan Hogberg:b
Anna Holmgren:fl
Mattias Olsson:dr
00.12.11  

評価:超A(滅多に出ない超傑作品)
( ダーリンちゃん.2000.12.10)

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