ジョイン・イン/アシュ・ラ・テンペル
Join inn/Ash Ra Tempel

1.Freak'n'Roll
2.Jenseits


1972年作

 この作品は久々にあのクラウス・シュルツが戻ってきて、自由自在にドラムを叩いている。特に一曲目の「Freak'n'Roll」ではファースト・アルバムで聴くことができる有機的でダイナミックで疾走するドラミングを中心にギター、ベース、シンセが絡みつくように追走するスピード感と浮遊感が聴き取れる。クラウス・シュルツひとりが戻っただけで、音楽性がガラリと変わってしまう。やはり、アーティストとしての力量があるのだろう。サウンドがいいカタチでまとまりを見せていて、非常に気持ち良く心の中に入ってくるように感じる。ファーストでは無我夢中にギターを弾きまくっていたマニュエル・ゲッチングはここでは落ち着きを感じさせながら、自分のギター奏法を全開させている。サイケデリック感はいくぶんか減少しているが、まだ少しサイケ色を感じさせる音楽になっているように思う。この浮遊するサウンドが20分間延々と続くのだが、ここにミニマル的な現在のテクノ・トランスの核心部分であるトリップ感覚に共通するものがある。コンピュータなどのデジタル機材のない時代に、人間の演奏技術が生み出したトリップ・サウンド。この1970年代の初頭に生み出されたドイツの音楽が1990年代以降の新しいエレクトロ・ミュージックの模範になるとはこの時誰も予想できなかったことだろう。

 2曲目「Jenseits」はがらりと質感の変わった穏やかな静の世界が展開される。このサウンドは現在のリスナーのほとんどがアンビエント・テクノ(ミュージック)だと言うだろう。というより、アンビエント・テクノそのものなのだ。もちろん、この時期にアンビエント・テクノという言葉など無かった訳だが、アンビエント・テクノというサウンドはしっかりと誕生していたいたのだ。この後、ドイツからはポポル・ヴーなど、この系統のサウンドがぞくぞくと出てくるのだが、おそらく70年代を通じて、アンビエント・ミュージックはポピュラー・ミュージックの日の当たらない場所で生息し続け、暗黒の80年代を経て、そして、90年代以降に再浮上することになる。

 この作品、かなり良いです。現在のテクノ/トランス/アンビエントをお好みの方々にはお勧めのサウンドです。

評価:B(手応えのある快作品)
( Hideyuki Oba.2003.9.10)
HartmutEnke:Bass
ManuelGottsching:Gitar
Rosi:Stimme
KlausSchulze:Drums

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