スターリング・ロジ/アシュ・ラ・テンペル
Starring Rosi/Ash Ra Tempel

1.ラフター・ラヴィング
2.デイドリーム
3.スキゾ
4.コズミック・タンゴ
5.インタープレイ・オブ・フォーシズ
6.フェアリー・ダンス
7.ブリング・ミー・アップ

1973年作

 マニュエル・ゲッチングという人は作品作りにおいて、とてもプライベートな感覚を持っているように思う。この作品の後、「インベンションズ・フォー・エレクトリックギター」や「ニュー・エイジ・オブ・アース」でマニュエル・ゲッチングのサウンドの世界観を確立するわけであるが、その底辺にはプライベートで小規模な(個人作業とも呼べる)感覚がある。それはひとりでダビングを重ねて音楽を作るという個人作業としてのプライベートということではなく、あくまでも感覚としか言いようのない世界観なのである。現にたったひとりで何十回というオーバーダビングを繰り返して作られたマイク・オールドフィールドの作品「チューブラベルズ」にはプライベートな感覚は感じられない。このアルバムは初期のクラウスシュルツと一緒に制作したヘビーでダイナミックなものでもなく、「インベンションズ」以降のギター・ミニマルサウンドでもない、肩のチカラが抜けたナチュラルで、ある意味で地味なニュアンスの作品である。しかし、そのサウンドと正面から向き合えば、彼らしいサウンドのアイデアに溢れ、ギターが生き生きと響いているのである。それを実験精神と呼んでも良いだろう。ここにプライベートな感覚があるのである。自分の部屋でコツコツといろんなサウンドの実験を楽しむ感覚。そのプライベートなサウンドをそのままアルバムにして発表したという感じである。

 ただし、この作品を単体で取り上げて名盤です、と言うにはやはり無理もある。地味で目立ちにくいという部分は音楽としての弱さも含んでいるからである。彼の仕事の流れの中でこの作品をどう位置づけるか。アシュラ及びマニュエルゲッチングの仕事を初期から系統立てて聴く作業の中で、この作品のポジションが見えてくる訳である。おそらく、彼の仕事の中では少し特異な世界観のこの作品は次の彼の仕事のための大切な序奏ということになるだろう。この仕事を経ることで、あのマニュエル独自のミニマルサウンドが誕生するわけである。

評価:C(楽しめる良作品)
( Hideyuki Oba.2003.6.24)
Rosi/voice
Manuel Gottsching/guitar,electronics
Harald Grobkopf/drums
Dieter Dierks/synthesizer

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