グローリー・オブ・ザ・インナー・フォース/フィンチ
Glory of the inner force/Finch

1.Register magister
2.Paradoxical moods
3.Pisces
4.A bridge to alice
5.Colosus part1
6.Colosus part2

1975年発売

 私はこのフィンチというバントをひょんなことから知ることになった。1997年頃のことである。ある時、ケンソー(日本のプログレを代表する私の大好きなバンド)が日本だけではなく、世界で特にアメリカで人気が出ているという話を聞いた私はインターネットで「KENSO」を検索してみた。するとあるはあるは。ケンソーが英語圏のホームページでたくさん取り上げられていたのだ。私は英語ができないので詳しくは解らないのだが、ケンソーというバンドのサウンドの説明に「Finch」というバンドを引き合いに出して語られているものが非常に多かった。初めは「Finch」という言葉は何なのか解らなかったのだが、読んでゆくうちにそれがオランダのロック・バンドの名前であることが判明した。とにかくケンソーのファンである私はこのフィンチというバンドに興味を抱かずにはいられなかった。オランダのバンドと言えばフォーカスくらいしか頭に浮かばない。一体フィンチとはどんなバンドなのだろうか。

 さて、本で調べてみようと思ったが、なかなかオランダのバンドについて書いてあるものが見つからなかった。じゃあ、CDを買いにお店に行くもどこにも置いていなかった。あきらめかけていた時、まだ私が知らないプログレシブ・ロック専門のCDショップが新宿の西口にあることを知った。それが「ガーデンシェッド」である。インターネットで地図を調べ、お店に行ったのだが見つからなかった。「あれ?どこなんだろう。」新宿西口のあの界隈は込み入っていて素人にはわかりにくい。再度、調べ直し新宿西口に向かう。そこでやっとたどり着くことが出来た。小さな入り口を入り、どこかいかがわしい雰囲気のある階段を上ると、ガーデンシェッドの扉があった。とても狭い店内にはプログレシブ・ロックの作品がぎっしりと並んでいた。店長と私だけの二人きりしかいないお店で、少し緊張しながら作品を探したが、見つからなかった。そこで、店長に「すいません、フィンチありますか?」と訪ねたら、あっさりと「あるよ。何が欲しいの?」と答えてくれた。店長はフィンチが残した全3枚のアルバムを渡してくれた。いやー、驚いた。あの狭い空間にあらゆるプログレ作品が網羅されている。ガーデンシェッドという店の奥深さに感動しながら、3枚のフィンチの作品を抱えて家路についた。

 ケンソーを説明するために海外のプログレ・ファンがフィンチを引き合いに出しているということは欧米ではフィンチはある程度認知された存在感のあるバンドということが分かる。彼らが活躍した時期を見ると1975年から77年ということでプログレシブ・ロックが時代のサウンドとして現役であった時である。実際に音を聴いてみて、私はそれほどケンソーとの共通点を見つけられなかった。もしケンソーと共通するところがあるとすれば、それは高度で複雑な変拍子を華麗に軽やかに表現するリズム隊の上にギター&キーボードがドラマチックに情熱的に歌い上げる部分だろうと思う。そして、バンドのリーダーがギタリストであること。

 やはり、オランダのバンドでギタリストがリーダーであることからも、フォーカスからの影響はとても大きいように感じる。フィンチはボーカルのないインストゥルメンタルのグループであるが、ギターのヨープのギターの音はフォーカスのギタリスト、ヤン・アッカーマンに近いニュアンスを持っている。また、畳みかけるようなリズムに乗り、ギター・ソロが歌い上げる感じはミラージュやスノーグースを出した頃のキャメルのサウンドを思わせる部分もある。ツイン・ギターの音の重なりもカッコいい。

 彼らは様々な素晴らしいプログレシブ・ロックのバンドから影響を受けながらオランダという国で自分たちのサウンドを見つけた実力派バンドである。攻撃的で高揚感のあるサウンドは聴く者を元気にさせるし、ゆったりとメロウなサウンドは聴く者を癒すだろう。軽やかな変拍子が実に気持ち良いのだが、その上に重なるメロディ・ラインがキャッチーでこころをグイグイ引っ張ってゆく。ある部分では泣きのメロディーもあり、楽曲のバランス感覚がとてもいい。ギターが中心のバンドであるが、そのギターを引き立たせるためのメロトロンサウンドも効果的に使われている。苦労して手にいれたかいがあった力作である。
Peter Vink :bass
Joop Van Nimwegen :guitar
Cleem Determeijer :keybords
Beer Klaasse :drums
評価:A(名盤と呼べる傑作品)
( 大庭英亨 2002.4.14)

[HOME][MonthlyKEPY][LIVE][DISK][Comments][Backnumber][Finch]