あの夏、いちばん静かな海/久石 譲
Ano Ntsu,Ichiban Shizukana Umi/Joe Hisaishi

1. Silent love(Main theme)
2. Clfside walts I
3. Island song
4. Silent love(In search of something)
5. Bus stop
6. While at work
7. Clfside walts II
8.Solitude
9.Melody of love
10.Silent love(Forever)
11.Alone
12.Next is my turn
13.Wave cruising
14.Clfside walts III

1991年10月作品
 耳の聞こえない若いカップルのある夏の出来事を描いた「あの夏、いちばん静かな海」という映画の凄さはその音楽の凄さにある。主演のふたりの演技には音としての声がない。映像から伝えられるのは彼らの表情と仕草だけ。彼らが今何を想い、何を伝えようとしているのか。それは声を出せる健常者の演技とは全く違っている。タイトルにあるようにとにかく静かであり、そして、限りなく切ないのである。

 この映画についてプロデューサの森昌行氏は次のように語っている。「今回の作品については、その企画の段階から、音楽をつけることを前提としてスタートしました。というのは、セリフのない主人公にニュアンスをつけていくのは、数々の具体的エピソードを映像で積み重ねてゆくのではなく、音楽によって表現しようという意図を、明確に演出的な手法として導入したからです。ただ、実際、どんな音楽かということについては、漠然としたイメージはあったものの、正直いって久石さんに作っていただくまで、確信を持てずにいました。そういう意味では、今回の作品は久石さんの音楽に随分と助けていただいたと思います。あらためて、その才能に感謝したいと思います。」

 久石譲は言葉では表せない感情やニュアンスを音楽という言葉に置き換えて、絶妙に表現できる数少ない音楽家の一人である。音楽の要素の中でもメロディーを大切にし、聴く者のこころの中に柔らかく、時には鋭く、また時には強引に入ってくる。特にこの作品では明るいメジャー調のメロディーはほとんどなく、切なく、悲しいマイナー調のメロディーで覆われているところが、また私のこころに響く要因なのかもしれない。また、エリック・サティ的な浮遊するようなピアノとバイオリンの掛け合い部分は聴く者の知性に何らかの刺激を与えるような気がする。サウンドの、アルバム構成の緩急が絶妙で映画を見る者の興味を最後まで持続させる巧さもあるのではないかと思う。

 この作品をきっかけに久石譲は北野武作品の総ての作品の音楽を担当することになる。久石譲、北野武のふたりにとって、この映画での出会いが後の彼らの活動に非常に大きな影響をもたらした。おそらく、「世界の北野」は久石譲がいなければ誕生しなかったかも知れない。

Joe Hisaishi:piano
Hiroki Miyano :guitar
Makoto Sato:bass
Masatugu Shinozaki:violin
Masami Horisawa:cello
Hirotani Junko:vocal
Joe Hisaishi:fairlight programming
                 評価:A(名盤と呼べる傑作品)
( 大庭英亨 2001.12.11)

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