ふたり/久石 譲
Futari/Joe Hisaishi

プロローグ
1.風の時間-オープニングテーマ
2.モノクローム
すぐ近くで
3.北尾家の人々
4.父と娘
5.不意の出来事
6.白い指先
明るい日
7.実加と真子
8.少女のままで
追憶
9.別れの予感
10.揺れるボタン
11.姉の初恋
友だち
12.風になって
13.いま泣いたカラスが・・・
14.石段の道
15.海の見える風景
16.命の糸
17.拍手の中の二人

卒業・入学
18.ふたりと二人
19.きらめきの瞬間
悪意
20.汚された台本
21.黒い電話
22.震え
23.いたわり
24.独り暮らし
ミュージカル
25.宴の光と影
26.痛み
家族の絆
27.淋しいひとたち
28.失ったもの
エピローグ
29.白いページ
30.草の想い-ふたり・愛のテーマ




1991年作
 私は映画マニアと呼ばれるような、それほど沢山映画を見るような人間ではないが、大学生の頃からかなりの映画を見てきたと思う。ハリウッド制作の超娯楽大作も好きだが、私は日本映画が好きである。世の中の人々が日本映画から離れ、ほとんど見向きもされない時代にあっても、日本映画を見ていた。薬師丸ひろこを前面に出し、日本の映画界の復活に貢献した角川映画のシリーズは大好きだったし、倒れる寸前のにっかつロマンポルノもよく見た。「お葬式」で一躍日本のスター映画監督になった伊丹十三映画、スタジオ・ジブリにおける宮崎駿のアニメーション映画、最近では北野武作品。そして、この「ふたり」の映画監督である大林宣彦の作品も大好きである。

 映画には様々な見方、楽しみ方があり、語り出せば止めどなくなってうまうが、映画の見方・楽しみ方のひとつに音楽があると思う。映画と音楽は切っても切れない関係であり、音楽なくしては映画は成り立たない。そして、映画を見終わった後に、そのサウンド・トラックを純粋に音楽として聴きたいと思う作品が時々存在する。私のCD棚にはいくつかの映画のサントラ盤が並んでいるが、その中に久石譲が制作したものがいくつもあった。面白かった映画、感動した映画の音楽を作ったのは誰だろうと調べると、必ずと言っていいほど久石譲の名前にたどり着くのだ。久石譲の作るサウンドは映画を越え、純粋な音楽作品として私のこころに響いてくるのである。

 このサウンド・トラックの映画「ふたり」は赤川次郎原作で、主演が姉役の中嶋朋子、妹役の石田ひかり。少女たちの揺れ動くこころをみずみずしく描いた大林宣彦監督ならではの作品である。久石譲の音楽はその映像の中で喜怒哀楽という人間のこころの表情を見事に描きだしている。全編がシンセサイザーによるオーケストレーションで、おそらく演奏は久石譲がひとりで行っているものと見られる。作品をひと言で語るキャッチフレーズのような短いメロディーが非常に印象的に繰り返し挿入される。最後にそのメロディーに詩がついて、歌になってエンディングを迎える流れになっている。この最後に歌うのが監督の大林さんなのだが、歌が非常に下手である。だけど、その歌声がものすごく心にしみてくるのである。下手なことが2倍にも3倍にもなって、素敵な歌になっているのである。映像なしで純粋に音楽だけでじーんとしてしまうのだ。久石作品の多くがそうであるが、こころを落ち着けたい時、私はこの作品を聴くことが多い。

                                   評価:B(手応えのある快作品)
( 大庭英亨 2001.12.11)

[HOME][MonthlyKEPY][LIVE][DISK][Comments][Backnumber][Joe Hisaishi]