もののけ姫/久石 譲
Princess of Mononoke/Joe Hisaishi

1. アシタカせっ記
2. タタリ神
3. 旅立ち-西へ
4. 呪われた力
5. 歳土
6. 出会い
7.コダマ達
8.神の森
9.夕暮れのタタラ場
10.タタリ神II-奪われた山
11.エボシ御前
12.タタラ踏む女達-エボシタタラうた
13.修羅
14.東から来た少年
15.レクイエム
16.生きろ
17.シシ神の森の二人

1997年作

18.もののけ姫 インストゥルメンタルバージョン
19.レクイエムII
20.もののけ姫 ボーカル
21.戦いの太鼓
22.タタラ場前の闘い
23.呪われた力II
24.レクイエムIII
25.敗走
26.タタリ神III
27.死と生のアダージョ
28.黄泉の世界
29.黄泉の世界II
30.死と生のアダージョII
31.アシタカとサン
32.もののけ姫ボーカルエンディング
33.アシタカせっ記 エンディング
 この「もののけ姫」の完成をもって宮崎駿は映画から引退するつもりでいた。長年の過酷なアニメーション作業での疲労が重なり、右手の痛みが限界に来ていた。自分の映画人生の総てをこの作品にかけようという決意があった。今までの宮崎作品にはなかった壮大かつ重くシリアスなテーマで貫かれた”もののけ姫”は子供たちの世界にとどまらない大人の映画作品として完成されていた。

 もののけ姫は古代の日本を舞台に描かれているが、それは現在の人間社会にそのまま置き換えることができる重要な警告になっている。自分勝手に森の木を切り倒し、動物たちを殺してゆく。その身勝手な行為の結果、人類は自分で自分の首を絞めることになることにもうそろそろ本気で気づかなければならない。宮崎駿は本気で人類の未来のためにメッセージを残そうとしたのではないかと思う。

 音楽もそのテーマや世界観を受けて、壮大でヘビーなサウンドになっている。久石譲が今までやってきた映画音楽は必ずエレクトリックなサウンド要素があり、どこかに必ずポップな部分を隠していた。ポピュラー・ミュージックの延長上にあった。しかし、このもののけ姫ではそれらの要素はまったくなくなり、クラシック的なフルオーケストラで総てをやってしまった。まさに王道の中の王道といった感じの作品である。まっすぐで、太く、力強い。映像のテーマと音楽のテーマが完全に一致している。非の打ち所のない素晴らしい作品である。シリアスでヘビーな映画であるにもかかわらず、当時の日本映画の観客動員の記録を塗り替えたというのも素晴らしいことである。ただ、どこまでみんながこの映画の持つテーマを深いところまで感じ取っているかが気になるところである。所詮、映画などで世の中は変えられないのか。人々のこころは変わらないのか。それを本気で考えてゆくと無力感だけが残る・・・

 しかし、変わることを、変えてゆくことを、進歩することを、前進することを忘れてしまっては、何もならないし、生きてゆく意味がなくなってしまう。素晴らしい映画をたくさん観て、素晴らしい音楽をたくさん聴いて、自分自身を変えてゆこう。
 
東京シティ・フィルハーモニーック管弦楽団
米良美一:ヴォーカル
新倉芳美:ヴォーカル
下成佐登子:ヴォーカル
旭孝:ケーナ
梯郁夫:和太鼓
竹井誠:龍笛
                 評価:A(名盤と呼べる傑作品)
( 大庭英亨 2001.12.11)

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