ガネシア/カズミ・バンド

Ganesia/Kazumi band

1.Rioji 2.Return Of Bolivian Song Man 3.Ganesia 4.Moon Drops 5.Racoon Roll 6.Moenega 7.Jazoo 8.Ka Ge No Nyuansu 


1982年作

 カズミ・バンドは完全にロック・バンドとしてこの「ガネシア」を完成させた。山木秀夫のドラムがビル・ブラッフォードを想起させるようになるのがこの辺の仕事からである。手数を減らし、シンプルで強烈な甲高いスネアのリズムで打ち抜いてゆく。日本のブル・ブラッフォード山木秀夫が自分の個性を全開させている。清水靖晃のサックスもテナーとバリトンを使い分け、腹の底にずしりと入り込んでくる重低音を響かせ始める。渡辺香津美のギター・ソロがゴリゴリと岩を砕きながら聴き手に迫ってくる。各プレイヤーが個人技を最大限に生かしながら、全体の調和を生み出している。繊細なアコースティック・サウンドを使いながら、エレクトリックの分厚いサウンドを対比させ、ダイナミックな音楽を作り上げている。笹路のアコースティク・ピアノの美しい旋律が前作にはなかった透明感を演出している。

 前作「頭狂奸児唐眼」ではロック方向、ジャズ方向というように大きくふたつの方向の曲が配置されて全体を作っていたように思うが、ガネシアは複雑に混沌とした流れの中で、全体が構成されているように感じる。ギター、サックス、ピアノ、ベース、ドラムという各演奏者の音の粒がひとつひとつくっきりと際立ちながら、絡み合っているようにも思える。そして、実験的なリズムパターンの開発によるユニークなアレンジや、ラスト曲のちんどん屋のリズムを取り入れた前衛的なサウンド展開は後のマライア・プロジェクトの姿を感じさせる。音楽の枠をぶち壊し、更なる新領域に足を踏み入れようとする姿勢がはっきりと聴き取れる。サウンドそして音楽に対する姿勢ともにプログレシブな作品である。


渡辺香津美:ギター
清水靖晃:サックス
笹路政徳:キーボード、ピアノ
高水健司:ベース
山木秀夫:ドラムス

評価:A(名盤と呼べる傑作品)

( Hideyuki Oba.2001.5.8)

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