キリン/渡辺香津美

KYLYN/Kazumi Watanabe

1.199X 2.Sonic Boom 3.Water Ways Flow Backwaed Again 4.Milestones 5.E-Day Project 6.Akasaka Moon 7.Kylyn 8.I'll Be There 9.Mother Terra 


1979年作

 おそらく俗にいうプログレという音楽とは関係がないと思われる渡辺香津美もジャズ・ロックという言葉になると急接近してくる。このキリンというバンドが活動した1978〜9年にかけては世の中でフュージョン・ブームが起こっていて、褒め言葉としてのフュージョンが勢いを持っていた時代である。そこにテクノ・ポップのブレイクも重なり、坂本龍一と渡辺香津美は飛ぶ鳥を落とす勢いをもったミュージシャン同士ということで出会うことになる。彼らはまず坂本龍一の初ソロ・アルバム「千のナイフ」で初めて仕事をする。そして、六本木のピットインで数回のセッションを行なう。また、当時デビューしたばかりのYMOに渡辺香津美が参加することになる。そんな流れの二人の関係の中で非常に短期間で短命だったのがこのKYLYNである。KYRYNはバンド名と考えても良いし、音楽プロジェクト名と考えても良い。1979年の5月から4ヵ月間で20回のライブを行ない、そしてこのアルバムを残した。参加メンバーを見てもらえばその凄さを理解してもらえるだろう。まだ、結婚する前の矢野顕子や高橋ユキヒロに加え、後にマライアを結成する清水靖晃も参加している。

 当時から最先端のジャズ・ミュージックを創造していたニューヨークの洗練されたサウンドを下敷きに、わが日本の音楽の才能たちが自由な発想で伸び伸びとしたジャズ・フュージョン・サウンドを展開させている。例えば3曲目の「Water Ways Flow Backwaed Again」は矢野顕子が作曲していて、彼女らしい特徴的なメロディーがジャズ・フュジョン・サウンドと融合して新しい感性を誕生させている。今聴いても彼らが作り出したサウンドはみずみずしく鮮烈な質感を保ったままである。恐ろしく洗練されていて、確実に大人の音楽である。二十歳そこそこの若者たちが溢れるエネルギーをサウンドに変えていたのだ。プログレのファンの人も、またそうでない人も、音楽が好きな人なら誰でもこの彼らの音楽を手放しで楽しめるに違いない。もし、まだ聴いていない人がいたら今すぐお店に買いに行こう。定番になってる名盤なので必ず入手できるはず。  

 

渡辺香津美:ギター
坂本龍一:キーボード
益田幹夫:エレピアノ
矢野顕子:アコースティック・ピアノ
小原礼:ベース
村上秀一:ドラムス
高橋ユキヒロ:ドラムス
ぺッカー:パーカッション
向井滋春:トロンボーン
本田俊之:アルトサックス
清水靖晃:サックス

評価:A(名盤と呼べる傑作品)

( Hideyuki Oba.2001.5.8)

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