スパイス・オブ・ライフ/渡辺香津美

The spice of life/Kazumi Watanabe

side-A1.MELANCHO 2.HIPER K 3.CITY 4.PERIOD
side-B1.UNT 2.NA STAROVIA 3.LIM-POO 4.J.F.K


1986年作

 ビル・ブラッフォード、ジェフ・バーリン、渡辺香津美の三人で何かをやる、となればプログレ・ファンなら特にジャズ・ロックファンなら誰しも心ウキウキしてしまう、そんな出来事である。しかし、その作品内容に関しては私は少し疑問なのだ。はたして、ここで演奏される楽曲をこのメンバーでやる意味があるのか。そして、それぞれのメンバーが全力を出しきっているのか。と考えて聴き返すとその疑問はいっそう膨らんでゆくのである。私は渡辺香津美が彼の音楽を突き詰めてゆく作業をほぼ達成してしまったので、ここらで一休みして音楽をちょっと楽しんでみようかなという気持ちで、今まで一緒にやってみたかった好きな二人と共演したように思えるのだ。だから、この作品を悪く言うつもりはないのだが、今まで音楽コンセプトをしっかり作り上げ、そしてそれを音というカタチにしてきた彼の研ぎ澄まされた仕事に比べれば、このような意見を言わざるを得ないということなのだ。

 とは言うものの、やはりこの三人でおこなわれた演奏が悪いわけはなく、イギリスのロンドンでレコーディングされたなりのサウンドのニュアンスがしっかりと刻まれている。ビル・ブラッフォードのスネアの音、ジェフ・バーリンの切れのあるベース、そこに渡辺香津美のギターが重なってゆく。渡辺香津美はA面の一曲目で80年代のキング・クリムゾン的なサウンドを展開しているが、その他ではキリン時代のメロディーがキャッチーなギター・フレーズを多く弾いている。だから、ある意味ではとてもわかりやすい作品と受け取ることもできる。気持ちよく聴いているファンもいるだろう。ま、作品の感じ方、とらえ方というのは十人十色、いろいろである。堅い事を言わなければ楽しめる作品には違いないと思う。


KAZUMI WATANABE : guitar
BILL BRUFORD : drums
JEFF BERLIN : bass

評価:B(手応えのある快作品)

( Hideyuki Oba.2001.6.6)

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