頭狂奸児唐眼/カズミ・バンド

Tokyoganjigarame/Kazumi Band

1.NO HALIBUT BOOGIE 2.MARS 3.BRONZE 4.TALK YOU ALL TIGHT 5.THE GREAT REVENGE OF THE HONG HONG WOMAN 6.NEVER HIDE YOUR FACE 7.BATHYSCAPHE 8.KANG-FOO 


1981年作

 渡辺香津美というアーティストが凄いと思うのは、自分が作ろうとする音楽のために、実に大胆で巧妙で緻密な音楽環境を作りあげることで、自分自身に刺激を与え、自らの才能をも開花させてしまうところにある。「キリン」では坂本龍一を始めとする日本の一流ミュージシャンたちと、「トチカ」では海外の世界的に活躍しているスーパースターたちと、そして、今回は日本を代表する先鋭的なミュージシャンの集団、マライアのメンバーで必要最小限のユニットを結成することで新たな音楽環境を作り出した。このユニットがカズミ・バンドであり、マライア・プロジェクトのひとつの形なのである。前作「トチカ」で頂点を極めた渡辺香津美がその先に進むために大胆なアプローチを展開させてきたのである。今までは数多くのミュージシャンたちと一緒になってサウンドの世界観を幅広く、多彩に展開させてきたのだが、「頭狂奸児唐眼」では贅肉をそぎ落とし、絞り込んだ世界観の中で深く突っこんだ作品づくりをしてきた。

 より鋭く、より攻撃的な音づくり。強烈なギターのリフで始まる一曲目の「NO HALIBUT BOOGIE」から渡辺香津美の新たな展開を十分に感じ取ることができる。渡辺香津美のギターのリフに清水靖晃のテナー・サックスが絡み合う、これこそがマライア・プロジェクトであるカズミ・バンドの最高に刺激的なサウンドである。ギターがそしてサックスが主導権を奪い合いながらサウンドをグイグイと引っ張ってゆく。クールで攻撃性に溢れる清水靖晃のテナー・サックスが存分に堪能できる数少ないアルバムのひとつであり、渡辺香津美が最もロックへ接近した作品でもある。私個人の話していえば、清水靖晃のサックスが一番カッコいいのがこのアルバム「頭狂奸児唐眼」であると考えている。清水靖晃をサックス・プレイヤーとしてだけで考えたなら、彼のソロ・アルバムよりも他のアーティストのリーダー・アルバムでのプレイのほうが断然吹きまくっているのだ。

 この作品はジャズ・フュージョンを愛する人よりも、プログレシブ・ロックをジャズ・ロックを愛する人の方がしっくりとくるような気がする。従来の枠からはみ出した世界観は保守的な人々には受け入れられにくいだろう。やはり、未来に向かって新しいことを楽しもうとする人々にこそ受け入れられるものなのだ。そういう意味からしても、カズミ・バンドの音楽はプログレとしてのジャズ・ロックと考えることができるのだ。  


プロデュース:マイク・マイニエリ

渡辺香津美:ギター
清水靖晃:サックス
笹路政徳:キーボード
高水健司:ベース
山木秀夫:ドラムス

評価:A(名盤と呼べる傑作品)

( Hideyuki Oba.2001.5.8)

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