アトミック・ルースター/土方隆行

Atomic Rooster/Takayuki Hijikata

side-A 1.Back Door Man 2.Japan Head 3.Atomic Rooster 4.Fine Day
side-B 1.All Through The Night 2.Magic Water 3.Utopia 4.Black Bible


1981年作

 俗に”王道”という言葉が使われることがあるが、この「アトミック・ルースター」は俗にいう王道の音楽ではないかもしれない。ま、何をもって王道とするかはいろいろな見解があるだろうから、マライア・プロジェクトでいえば「スマッシュ・ザ・グラス」「エントリックス」を王道とすればと注釈を加えておきたい。マライア・プロジェクトのサウンドはどれも様々な音楽要素を取り入れながら、マライア流サウンド・クリエーションによってひとつのカタチを創造している。その意味でいえばこの作品もまさにマライアのサウンド・クリエーションが生かされているのだが、実際の音になって表現された時の肌触りというか質感というか、最終的にレコード盤に刻まれたサウンドはどこかねじれているような、フィルターがかかっているような、ひねくれた素直じゃない顔を見せているのだ。特にマライアではあまり見られない典型的な南国ラテン・サウンドがかなりよじれたカタチで表現されたりしている。ラテン音楽なのだがラテンじゃない変な音楽になっているのだ。また、山木秀夫に叩き出される妙な変拍子による歪んだサウンドが輪をかけて不思議な空気感を作っているようにも思われる。そして、なんともゆったりしたラウンジ・ミュージックである「Utopia」の挿入などは一般の音楽ファンにダサイ音楽として誤解を招きそうなギリギリの線で保たれている。いや、実際に1981年当時の私は理解できないでいたのだ。ある意味でキッチュなサウンド構成に戸惑う私だったのだ。以前、ト−タスのライブ・レポートでト−タスが演奏する音楽の2面性(クールでインテリジェンスな面と間抜けなどろーんとした面)が理解できないと書いたことがあるが、「アトミック・ルースター」は感性の乏しい人間には理解できない音楽世界をもっているアルバムである。あの時代にこのサウンドを真に理解し、堪能した人は結構少数だったのではないだろうか。ま、これは自分自身の感性の乏しさを弁護することにもなってしまうが、マライアは相当先に進んだサウンドを世の中に提示していたのだ。現在、このアルバムを聴き返す度に彼らが作り出したサウンドの面白さに感心するばかりである。

サウンド・プロデュース:清水靖晃、笹路政徳
共同サウンド・プロデュース:土方隆行

土方隆行:ギター、ボ−カル
笹路政徳:キーボード
渡辺モリオ:ベース
山木秀夫:ドラムス
清水靖晃:サックス
PIC:ボーカル
村田有美:コーラス
イヴ:コーラス Satoshi.J.Murakawa:ボ−カル
マライア・スーパー・ホーンセクション

評価:B(手ごたえのある快作品)

( Hideyuki Oba.2001.5.8)

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