マージナル・ラブ〜究極の愛/マライア

Marginal Love/MARIAH

1.Lucy`s Small Hotel 2.Marginal Love 3.A Long Show Beyond 4.Prince And Pauper 5.So What 6.Lady Of The First Water 7.Rim Of Time 8.Entrance Of Endless Cafe


1981年作

 「Marginal Love〜究極の愛」。マライアの愛はどこか歪んでいる。その愛は幸せと反対側の暗闇の中でひっそりと呼吸している。この作品でもテーマをこころの裏側、闇の部分に踏み込んで音楽世界を作っている。そして、いつものようにその作品テーマをサウンドに表現する時のアイディアが凄いのだ。1曲目「Lucy`s Small Hotel」、金属用ノコギリで分厚い鉄板を切っているような、ちょっと背筋がゾクゾクする無気味な不協和音を土方隆行のギターが作り出す。まるで地獄の扉が軋みながら開くように・・・。清水靖晃のテナーサックスがどこか空虚な旋律をくり返す。「ようこそ」と低く無気味な村川ジミ−聡の声でマライア・ワールドへ招かれる。山木秀夫が叩き出す今まで聴いたこともない変拍子が奇妙なサウンド空間を描いて行く。心地よいというのではなく、ちょっと恐いくらい無気味でこころに引っ掛かるサウンドだ。光の届かない暗闇のための音楽のようでもある。それは2曲目「Marginal Love」でも変わらなく続いて行く。確か私の記憶ではこの曲は TDKとかマクセルとかのカセット・テープの CM音楽になっていたと思う。メタリックで先進的なイメージで映像も作られていた。

 マライアのサード・アルバムとなるこの作品では前作、前々作のスケール感のある壮大なスペース・サウンドから凝縮したストイックな世界へと少しニュアンスが変わってきたように感じる。圧倒的に響くコーラスが影を潜め、ストリングスは限られた本数で静かに鳴っている。超バカテク軍団がよりバンドというユニットとして強固になったサウンドなのかも知れない。TOTOのギタリスト、スティーブ・ルカサーがゲストで参加している。7と8曲目で土方隆行と多彩なギターバトルを展開させている。ギターという楽器がこんなにもいろいろな音が出せるのかということを気付かせてくれる。楽器と言うものは自由なのだ、決まった使い方など初めからないのだ。楽器というもの、音楽そのものの枠組みを壊し、新しい世界を創造する。それはマライア・プロジェクトの全ての演奏者たちに言えることである。日本でこんな実験性に溢れた音楽活動を行なったのは後にも先にもマライアだけではないだろうか。

サウンド・プロデュース:マライア

土方隆行:ギター、ボ−カル
笹路政徳:キーボード
清水靖晃:テナー&アルト・サックス
村川ジミ−聡:ボ−カル
渡辺モリオ:ベース
山木秀夫:ドラムス
スティーブ・ルカサー:ギター
多 ストリングス・セクション

評価:超A(滅多にでない超傑作品)

( Hideyuki Oba.2001.4.2)

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