神経衰弱/亜蘭智子

Sinkeisuijyaku/Tomoko Aran

side-A 1.Secret Desire(下心) 2.悲しきボードビリアン 3.So Get Up(要塞の女たち) 4.乱れたベッド 5.狂った歯車
side-B 1.完全犯罪 2.雨のかわりに毒薬を 3.神経衰弱 4.ノアの方舟 5.Meditation(冥想)


1981年作

 亜蘭智子といえば現在は文化人的なタレントとしてテレビのコメンテーターとしても活躍している美人作詞家である。数多くのポピュラー・ミュージック作品の歌詞を書き、ヒット曲も多い。そんな彼女のデビュー作品はひとりのシンガー・ソング・ライターとしてマライア・プロジェクトのサポートを得て世に出されたのである。曲のタイトルを見てもらえばわかると思うが、彼女の書く詩は人間の心の裏側や奥底に隠されている本音や闇の部分を掘り起こすものが多い。あえてネガティブなメッセージを暴き出す彼女の世界がマライア・プロジェクトの世界観とも合致し、手を組むことになったのだろう。言い方を変えれば、彼女の歌詞の世界に触発されてマライアもサウンドを創造したといえるのではないか。人間のそして女性の恐さ、醜さ。やはり普通では扱わないテーマを堂々と作品に仕上げてくるところがまさにマライア・プロジェクトならではのもの。歌謡曲というポップスでありながら、毒がありひねりがあるサウンドは現在でいえば「美笑」の世界と非常に近い。(美笑とは坂川美沙都という亜蘭智子的な透明感あるボーカルを中心に「マスク」という日本のプログレシブ・ロックバンドがバックを勤めるマニアックで奇妙なポップスを作っているバンドである。歌は亜蘭智子より断然上手い。)というより、美笑はこの亜蘭智子&マライア・プロジェクトの世界を上手く自分のモノにしてしまった後継者なのである。

 亜蘭智子はハッキリいえば歌は下手である。透明感のある美しい声質かも知れないが上手いとは言えない。しかし、その下手なところがまた彼女独特の詩の世界を上手く表現しているようにも感じる。美形の容姿から発せられることで、毒のある詩の世界がいっそう際立って伝えられるとも言える。また、マライア・プロジェクトならではのサウンドが歌詞の毒素をより鮮明に描き出すことに一役かっているのだ。4ビート・ジャズ、レゲエ、インド音楽、童謡を奇妙で歪んだアレンジによって別世界の音楽にしてしまう。また、他のマライア・プロジェクトの作品で使われている曲をアレンジを変えて別の詩を加え全く新しい曲として表現したりするのも、マライアファンとしては非常に楽しめる部分である。

清水靖晃:テナー&アルト・サックス
土方隆行:ギター、ボ−カル
笹路政徳:キーボード
渡辺モリオ:ベース
山木秀夫:ドラムス
村川.J.聡:コーラス

村田有美:コーラス、ボーカル
北島健二:ギター
浜瀬元彦:ベース

評価:B(手ごたえのある快作品)

( Hideyuki Oba.2001.5.8)

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