ムーディー・ブルースの記念すべきファースト・アルバム「Days Of Future Passed」が発売されたのは1967年。ちょうどこの年にあのビートルズがあの名盤「サージャント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を世に送りだしている。「サージャント・ペッパーズ〜」はポピュラー・ミュージックを芸術まで高めた金字塔として語り継がれ、誰もが知るところであるが、1967年当時はこの「Days Of Future Passed」のロックとオーケストラの融合から生まれた画期的なサウンドはロックの歴史を塗り替えたとさえ言われ、その後の多くの音楽に大きな影響を与えたのだ。そして「サージャント・ペッパーズ〜」と同じくらい音楽界に衝撃をあたえた偉大な作品なのである。
クラシック・オーケストラとロック・ミュージックの融合、作品全体がひとつのストーリー/トータル性を持つコンセプト・アルバム。多くのプログレシブロックの作品解説でこのような言葉が使われてきたが、ロックの時代を振り返って見た時、本当の意味で始めて作られたコンセプト・アルバムがこの「Days Of Future Passed」と言える。ムーディー・ブルースのこの作品があったから、「ピンクフロイド/原始心母」「イエス/危機」「E.L.P/展覧会の絵」「キャメル/スノーグース」などの名盤が生まれたといえるのだ。
作品のコンセプトは人間の一日の流れを音楽で表現するというもので、その下敷きになっているのは「ドヴォルザークの新世界」「シェイクスピアのロミオとジュリエット」「トルストイの戦争と平和」「ディズニー映画のファンタジア」など。そのサウンドは映画のサウンド・トラックのように目の前に映像が浮かんでくるような、聴く者のイマジネーションを刺激する素晴らしいものである。Days Of Future Passed〜過ぎ去った未来の日々と題されたこのアルバムは広大な宇宙の目から見ればちっぽけな存在に過ぎない人間の1日の姿が等身大のカタチで表現されている。