デイズ・オブ・フューチャー・パスト/ムーディー・ブルース

Days Of Future Passed/Moody Blues

Side-A 1.一日が始まる 2.夜明け<夜明けの空> 3.朝<アナザー・モーニング> 4.ランチ・ブレイク
Side-B 1.昼下がり<永遠の昼下がり> 2.夕暮れ<夕日とたそがれ> 3.夜<サテンの夜>


1967年作

あなたはムーディー・ブルースを知っていますか?
あなたはムーディー・ブルースの作品を聴いたことがありますか?

いきなり変な質問をしてしまったが、このムーディー・ブルースというバンドはプログレシブ・ロックの開拓者であり、その偉大な功績と現役当時(1966年〜1970年代の中ごろまで)のイギリスで絶大なる人気を誇っていたスーパー・グループであるにも関わらず、その後、彼らのことをプログレシブ・ロックの話題の中で語られることが非常に少ないのは何故なんだろう?そして、本国イギリスでの人気の高さに比較して、日本での人気の低さはどうしてなのか?このKEPYのホームページに遊びに来てくれてる人の中でも、名前は知ってるけれど聴いたことのない人が結構いるのではないだろうか。実はこの私もそれほどムーディー・ブルースに詳しいという訳ではない。けれど、やはりこのバンドを押さえておかなければKEPYとして大きな穴があいてしまう。ムーディー・ブルースはクリムゾン、E.L.P、フロイド、イエスの次にプログレ5番目のグループとしてあげてもおかしくないほど超ビックネームなのだ。

ムーディー・ブルースの記念すべきファースト・アルバム「Days Of Future Passed」が発売されたのは1967年。ちょうどこの年にあのビートルズがあの名盤「サージャント・ペッパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を世に送りだしている。「サージャント・ペッパーズ〜」はポピュラー・ミュージックを芸術まで高めた金字塔として語り継がれ、誰もが知るところであるが、1967年当時はこの「Days Of Future Passed」のロックとオーケストラの融合から生まれた画期的なサウンドはロックの歴史を塗り替えたとさえ言われ、その後の多くの音楽に大きな影響を与えたのだ。そして「サージャント・ペッパーズ〜」と同じくらい音楽界に衝撃をあたえた偉大な作品なのである。

クラシック・オーケストラとロック・ミュージックの融合、作品全体がひとつのストーリー/トータル性を持つコンセプト・アルバム。多くのプログレシブロックの作品解説でこのような言葉が使われてきたが、ロックの時代を振り返って見た時、本当の意味で始めて作られたコンセプト・アルバムがこの「Days Of Future Passed」と言える。ムーディー・ブルースのこの作品があったから、「ピンクフロイド/原始心母」「イエス/危機」「E.L.P/展覧会の絵」「キャメル/スノーグース」などの名盤が生まれたといえるのだ。

作品のコンセプトは人間の一日の流れを音楽で表現するというもので、その下敷きになっているのは「ドヴォルザークの新世界」「シェイクスピアのロミオとジュリエット」「トルストイの戦争と平和」「ディズニー映画のファンタジア」など。そのサウンドは映画のサウンド・トラックのように目の前に映像が浮かんでくるような、聴く者のイマジネーションを刺激する素晴らしいものである。Days Of Future Passed〜過ぎ去った未来の日々と題されたこのアルバムは広大な宇宙の目から見ればちっぽけな存在に過ぎない人間の1日の姿が等身大のカタチで表現されている。

ロンドン交響楽団との共演も画期的であった思うが、プログレ・ファンならたまらないメロトロンがこの作品でも使われている。もちろん、オーケストラが前面に出ているので、出番は少ないものの、後の彼らの作品の特徴を決定づけるマイク・ピンダーのメロトロンが良い感じで効果的に響いている。やっぱり、ムーディー・ブルースといえばメロトロンでしょう。そして、そのメロトロンの肌触りはクリムゾンともジェネシスともイエスとも違う独特のサウンドが確立されて行くのである。淡い光が差し込んでいるようなムーディー・ブルース的メロトロンである。

プログレの数々の名作を聴いてきた人がこの作品を初めて聴いたならば、おそらく最初は「えっ?これがプログレシブロック?」と頭をひねるかもしれない。それはロックというイメージが出来上がっていると、違和感を感じてしまうからではないかと思う。ここにあるのはロックの形が出来る前の様々な音楽たちが融合したサウンドなのだ。でも、音楽作品として、純粋に楽しもうとすればその素晴らしさがすぐ見つかると思う。1967年という今から34年も前に作られた作品である。クリムゾンもツェッペリンもまだ生まれていなかった。ロックという音楽がまだ赤ん坊の時代に、もはやこんな大胆で画期的な試みがなされていたことに驚きを隠すことはできないだろう。何かあたらしい音楽を創造したいというアーティストの前向きな気持ちが溢れている。この精神こそがプログレシブであり、それをまっ先に実践したのがムーディー・ブルースなのである。

ジャスティン・ヘイワード:Vo,Guitar
ジョン・ロッジ:Vo,Bass
マイク・ピンダー:Vo,Key
グレアム・エッジ:Dr
レイ・トーマス:Vo,Flute


評価:A(名盤と呼べる傑作品)

( Hideyuki Oba.2001.1.13)
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