童夢/ムーディー・ブルース
Every Good Boy Deserves Favour/Moody Blues
Side-A 1.プロセッション 2.ストーリー・イン・ユア・アイズ 3.ゲシング・ゲーム 4.エミリーの歌
Side-B 1.アフター・ユー・ケイム 2.生命をもう一度 3.ナイス・トゥ・ビー・ヒア 4.家へ帰れない 5.マイ・ソング
1971年作
「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」「失われたコードを求めて」「夢幻」「子どもたちの子どもたちの子どもたちへ」「クェッション・オブ・バランス」そして、通算6枚目でわが日本でも大ヒットとなった作品がこの「童夢」である。ムーディー・ブルースは本家であるイギリスではすでに人気グループになっていた。第3作目の「夢幻」で全英チャートNO.1を獲得し、その後出すアルバムすべてがNO.1に輝いていた。ある意味で売れすぎていたため、音楽評論家の一部からは「ムーディー.ブルースの音楽は、思いあがっており、高慢ちきだ」といわれていた。そんなムーディー・ブルースがあらたに提示したコンセプトが『愛』だった。シンプルでわかりやすく、大きな優しさのあるメロディーで作品全体を包み込んでいる。
荘厳なキーボードとコーラスで始まる1曲目の「プロセッション」には、どこか哲学的で宗教的な人間のこころの深いところにメッセージを投げかけているような重厚さがある。インドの楽器シタールや伝家の宝刀メロトロンがそのサウンドイメージを広げてくれる。2曲目の「ストーリー・イン・ユア・アイズ」では一転してポップでスピード感溢れる心地よい世界。シングル・ヒット・チャート進出を狙うべくつくられたとされるのがうなずける作品である。個人的にはキャメルの名曲「エコーズ」の持つ、カッコよさと心地よさがこの曲の中にあると思う。とにかく大好きな曲である。そして、なんといってもエンディングを飾る名曲「マイ・ソング」を忘れることはできない。6分半の時間の中にきちんとした時間の流れがあり、ドラマチックでエモーショナルな感動的な作品である。もちろん、メロトロンも泣いている。ムーディー・ブルースはインストッルメンタルの曲はあまりなく、必ず歌詩がある。ヴォ−カルそしてコーラスのハーモニー。これが素敵なのだ。プログレシブ・ロックのひとつの特徴である演奏技術の高度なインストをメインにするのではなく、歌詞で歌の心を表現するところが、逆にある意味では現在のプログレのマニアにはあまり気に入られない原因なのかも知れない。変拍子や複雑なアレンジで音楽を作るのがプログレだと思っているあなた、それは間違い。それはあくまでも表面的な話である。音楽の奥にある精神的な部分から新しいサウンドの世界を作って行くことこそがプログレだと私は考える。今までにない新しいモノを生み出すその気持ちがなければプログレシブとはならないのだ。
一般的にムーディー・ブルースは1967〜1972年が全盛期といわれ、つまり、プログレシブ・ロックという音楽ムーブメントがピークを迎える前にひと花咲かせ終えてしまった。少し早すぎた登場だったために、その後現われる多くのグループに王座をとって代わられたという印象になってしまったのかも知れない。しかし、この先進性とパイオニア精神がこのグループの最大の特徴である。やはり、初めにやった人は偉いのだ。物まねではない自分達のオリジナリティを確立したムーディー・ブルース。この「童夢」は数あるプログレの名盤の中でも、歴史に残る作品であると私は認識している。
ジャスティン・ヘイワード:Vo,Guitar
ジョン・ロッジ:Vo,Bass
マイク・ピンダー:Vo,Key
グレアム・エッジ:Dr
レイ・トーマス:Vo,Flute
評価:超A(滅多に出ない超傑作品)
( Hideyuki Oba.2001.1.13)
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