オクターヴ/ムーディー・ブルース

Octave/Moody Blues

Side-A 1.Steppin' in slide zone 2.Under moonshine 3.Had to fall in love 4.I'll be level with you 5.Driftwood
Side-B 1.Top rank suite 2.I'm your man 3.Survival 4.One step into the light 5.The day we meet again


1978年作

1978年といえばもうプログレシブロックは衰退の道を歩み始めていた。でも、プログレシブ・ロックにとって悪いことばかりではなかった。この年にU.Kが「憂国の四士」を、ジェネシスが「そして3人が残った」を発表した。実は私はこの時はまだ、ムーディー・ブルースというプログレのスーパー・グループの音を聴いていなかった。彼らが6年ぶりにニュ−・アルバムを出すというので期待して買ったのが「オクターブ」なのだ。当時、音楽雑誌ではピンク・フロイドの「アニマルズ」、イエスの「究極」、E.L.Pの「ワークス」同様にこのムーディー・ブルースの新作もプログレシブ・ロックの衰退を示す作品として語られていた。以前のようなテーマ性が感じられないし、こじんまりとまとまったモノとして受け止められていた。でも、私はそんな世間の風潮とは反対に、この「オクターブ」はかなりの愛聴盤として聴き込んだものだ。この作品がプログレかどうかなど関係なく、良いものは良い、好きなモノは好きなのだ。

この「オクターブ」が気に入ったから、私は過去の名作を遡って聴くことになったのだ。彼らの最高作といわれる「童夢」も確かに凄いけれど、だからといってこの「オクターブ」の素敵なサウンドが色褪せることはなかった。この作品にはムーディー・ブルース特有の優しさとはかなさと安らぎとやわらかさが十二分に表現されている。テーマ性のはっきりしたコンセプト・アルバムではないかもしれないが、彼らのいつもの作品と同じくコンパクトな小品を積み重ねてひとつのアルバムがはっきりとした輪郭をもって完成されていることに変わりはない。とにかくA面の1曲目「Steppin' in slide zone」の霧の中をゆっくりと進みながらだんだんと姿が見えてくるような思わせぶりな導入部分からすっかりと作品世界に引き込まれてしまう。ひとつひとつの曲がとても丁寧に作られている感じで、聴いていて心地よいのだ。個人的にはB面を良く聴いた。B面1曲目の「Top rank suite」からラスト曲の「The day we meet again」までの流れはいつ聴いても感動してしまう。特に「The day we meet again」は涙なしに聴くことはできない。アルバムを締めくくるB面のラスト曲が感動的なものであることがその作品の価値を大きく左右するという私の個人的な評価の基準があるのだが、それでいくとこの「オクターブ」はかなりの名盤ということになる。キャメルの「I can see your house from here」のラスト曲「Ice」、ジェネシスの「そして3人が残った」のラスト曲「フォロー・ミ− フォロー・ユー」など、ちょうど私が高校生の頃、良く比較しながら楽しんだものである。

個人的には本当に大好きなアルバムで、忘れることができない思い出も多い。この作品の後、キーボードのマイク・ピンダーが脱退するのだが、「The day we meet again」は彼のためにムーディー・ブルースが送った曲ではないかといわれている。また、いつか会おう。なんとも素敵な終わり方ではないか。この曲、いや〜、何度聴いてもいいですねぇ。そういえばムーディー・ブルースはどの作品も最後の曲が素晴らしい。私の知る限りであるが「デイズ・オブ・フューチャー・パスト」「童夢」「セブンス・ソージャン」全て最後の曲は感動作である。終わりよければすべてよし、である。

ジャスティン・ヘイワード:Vo,Guitar
ジョン・ロッジ:Vo,Bass
マイク・ピンダー:Vo,Key
グレアム・エッジ:Dr
レイ・トーマス:Vo,Flute


評価:A(名盤と呼べる傑作品)

( Hideyuki Oba.2001.1.13)
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