エクスターミネーター

Exterminater

1)Kill All Hippies 2)Accelerator 3)Exterminator 4)Swastika Eyes* 5)Pills 6)Blood Money 7)Keep Your Dreams 8)Insect Royalty 9)MBV Arkestra[if they move kill `em] 10)Swastika Eyes** 11)Shoot Speed/Kill Night 12)I`m Five Years Ahead Of My Time


2000年作

この作品におけるプライマル・スクリームという集団はBobby Gillespiを中心にAndrew Innes , Robert Young , Gary Mounfield , Martin Duffy , Darrin Mooney , Jim Hunt , Duncan Mackayというメンバーで構成されている。その他にミュージシャンとしてMarco Nelson , Kevin Shields , Bernard Sumner , Phil Mossman , Daren Morris , Zac Danziger , Brendan Lynch , Greg Knowles , Gay-yee Westerhofという人々が参加し、プロデューサーとしてBrendan Lynch、David Holmes , Chemical Brothers , Kevin Shields 等が係わっている。これを見ると音楽の作り方も大きく変わったなぁとつくづく思う。もはやメンバーを表すクレジットにギターやベース、ドラムといった表記は無くなってしまった。ボビー・ギレスピーという人物のまわりに集まったプライマル・スクリームは様々な役割をもつ多くの人々とコラボレーションすることでこの「エクスターミネーター」という作品を作り上げた。今、プロデューサー、ミュージシャンという役割が昔のものと大きくカタチを変えて機能している。例えばケヴィン・シールズ(Kevin Shields)は「Exterminator」でギターを弾き、「Accelerator」と「MBV Arkestra」をミックスし、「Shoot Speed/Kill Night」をプロデュースしている。彼はミュージシャンであり、ミキサーであり、プロデューサーでもあるのだ。ひとつのアルバムを作るときの人間の関わり方が自由になり、また複雑になって、私たち聴く側から見えにくくなっている。と同時にミックスやプロデュースという仕事に個性を発揮しやすくなっていて、外からも分かりやすくなっている部分もある。

音楽の作り方自体がこんなに変化し、進歩?しているからにはその音楽の内容のほうも大きく変化するのは当然の成り行きなのだが、しかし、音楽自体の聴こえ方はそんなに驚くほど変わって聴こえるわけではない。生演奏とサンプラーをミックスして作るその音はある意味では昔のやり方でもできたのだ。ただ、コンピュータの普及で作り方が大きく変わっただけなのだ。一曲目「Kill All Hippies」はまず、メロトロンの空間を被うような独特の雰囲気で幕を開ける。ここに打ち込みのドラムとシンセサイザーが重なってくる。ここでの音の肌触りは確かに1999〜2000年現在の音に違いないけれど、われわれ1970年代のプログレシブ・ロックを愛する世代には懐かしささえ感じさせるものなのだ。メロトロンの音はそれがサンプラーによるものであってもチカラ強くこころに染み込んでくる。デジタルの技術が進歩すればするほど、そこから作られるイメージ(サウンドも含む)はよりアナログに近づいてきている。今、サンプリングされた音と生楽器の音を聴き比べてもその違いを言い当てることはほとんど不可能だろう。ある意味ではデジタルとアナログはひとつになりつつあるのだ。オルタナティブ・ダンス・パンク、このCDの帯?にはこう書いてある。もう何のことだかさっぱり分からない。ま、それだけ様々な音楽の要素が入り交じり、幾重にも重なるレイヤーのようにサウンドが見え隠れしているのだ。ダンス・ミュージックであり、パンクであり、プログレシブ・ロックであり、マイルス・ディヴィスの70年前半のジャスであり、テクノでもある。私としては2000年現在という時代に適応したプログレシブ・ロックがやっと出てきたな、と言う感じでとてもうれしい気持ちでいっぱいだ。

評価:A(名盤と呼べる傑作品)
( Hideyuki Oba.2000.3.12)

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