セカンド・ソウツ-セカンド・ムーブ/プリズム

Second thoughts-second move/PRISM

side-A 1.SHAKE YOUR HEAD 2.DAYDREAM 3.BANG YOUR HEAD 4.SPANISH SOUL
side-B 1.CRYSTAL NIGHT 2.SLOW MOVE 3.BENEATH THE SEA part-I,part-II,part-III


1978年

 ファースト・アルバム「PRISM」は全曲を和田アキラが書き下ろしたが、このセカンド・アルバムでは渡辺健、森園勝敏、久米大作も曲を書いている。そのせいもあってか、それぞれの曲にメンバーの個性が表れ、作品全体としてのバラエティー感がとても楽しい。第一期プリズムをファースト、セカンド、サードを制作した時代とするならば、この時期のプリズムは大きく分けて2つの側面を持っている。ひとつはトロピカルな南の島の陽射しを感じさせるような甘くメロウな世界、もうひとつはワイルドでクール、鋭く攻撃的な世界。このアルバムで誰がどの曲を書いたのか確かめてゆくとメンバーの音楽的嗜好が見えてきておもしろい。トロピカルでメロウなサウンドが好きなのは森園勝敏であり、鋭く攻撃的なサウンドを演出しているのは和田アキラであることがよくわかる。まぁ、そんな単純にプリズムの音楽は片づけられない複雑さを持っていることを前提としての話ではあるけれど・・・。

 1曲目-渡辺健/作「SHAKE YOUR HEAD」からラスト曲-和田アキラ/作「BENEATH THE SEA」まで、どの曲も素晴らしく、私を楽しませてくれる。特にside-Aの4曲目-和田アキラ/作「スパニッシュ・ソウル(SPANISH SOUL)」とside-Bラスト曲「ビーナス・ザ・シー(BENEATH THE SEA)」は後のライブ活動で現在に至るまでの20年以上もの間演奏され続けている名曲中の名曲で、特に注目して聴きたい。
「SPANISH SOUL」はリターン・トゥ・フォー・エヴァーで天才ギタリストとしてスターになったアル・ディメオラに影響を受けたといわれる和田アキラが彼独自のスパニッシュ的ギター・サウンドを展開させている。デイメオラのギターと比べながら聴くのもおもしろいと思うが、私はアラン・ホールズワースと聴き比べることもお勧めしたい。世界的に評価されているギタリストと比較すればするほど、和田アキラのカッコ良さ、素晴らしさが見えてくる。デイメオラの鋭い歯切れ良さとホールズワースのやわらな流麗さを兼ね備えた天才ギタリスト、それが和田アキラなのだ。
「BENEATH THE SEA」はpart-I,part-II,part-IIIがあり、13分を超える組曲で、和田アキラの作曲能力の高さが光る素晴らしい作品である。透明感あるアコースティック・ギターの静かなイントロから曲は幕をあける。穏やかで静まりかえった大海が目に浮かぶ。徐々にさざ波が立ち、海に表情が現われてくると、今度はいきなり大空に稲光りが走る。荒れ狂う空と海。大自然の脅威である嵐が吹き荒れる。ゲスト参加の村上ポンタ秀一と鈴木徹のツインドラム、和田アキラと森園勝敏によるギター・バトル。ワイルドでクール、鋭く攻撃的なプリズムのサウンド世界が縦横無尽に繰り広げられる。そして、嵐は去り、静かないつもの海に戻ってゆくのである。

彼らが意識していたかどうかは解らないが、ジャン・リュック・ポンティの名作に「Enigmatic Ocean/秘なる海」という作品がある。この中に”Enigmatic Ocean part-I,part-II,part-III”という曲があるのだが、海をテーマにした組曲であること、アラン・ホールズワースとジャン・リュック・ポンティのギターとバイオリンの掛け合いなど、サウンド・コンセプトがとても似ているように思う。もちろん、どちらも素晴らしい作品であることも同じである。アラン・ホールズワースから影響を受けたとされる和田アキラ。私は意識的に狙ったのではないかと推測している。

聴き手というものは贅沢で、前作と同じレベルでは次の作品は満足しないもの。ファースト・アルバムで非常に高い評価を得て、その半年後に、また、こんなに素晴らしい作品を作ってしまったプリズム。やはり、この時期の彼らの勢いのようなものが感じられる。セカンド・アルバムでプリズムはさらに前進したのである。

和田アキラ / ギター
森園勝敏 / ギター
渡辺健 / ベース
久米大作 / キーボード
伊藤幸毅 / キーボード
鈴木徹 / ドラム

ゲスト 村上ポンタ秀一/ドラムス

評価:超A(滅多に出ない超傑作品)

(Hideyuki Oba 2001.3.7)
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