一触即発/四人囃子
Ittshokusokuhatu/Yoninbayashi

1.ハマベス
2.空と雲
3.おまつり(やっぱりお祭りのある街に行ったら泣いてしまった) 
4.一触即発
5.ピンポン玉の嘆き

ボーナス・トラック(シングルで発売の)
1.空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ
2.ブエンディア

1974年作

 日本のロック・シーンの中でプログレシブ・ロックのバンドとして初めて世の中から認知され、メジャー・シーンで活躍したのがこの四人囃子である。それは真の意味でプログレシブな音楽だった。日本の音楽シーンは1970年代に入るとグループ・サウンズの熱気がおさまり、ブリティッシュ・ロックから影響を受けた本格的なロックが次々と誕生していた。例えば「クリエイション」「カルメンマキ&オズ」「サディステイック・ミカ・バンド」そして「四人囃子」。この四人囃子が登場した1974年、世界を見渡せばピンク・フロイドがE.L.Pがイエスがクリムゾンがその音楽活動の頂点を極めていた。四人囃子はそれらのスーパー・バンドの音楽の空気を自然なカタチで吸い込んで、自分たち日本人ができる等身大のロックを作りあげた。カッコつけて英語の歌詞で歌うバンドが多かった当時の音楽シーンの中で、日本語の歌詞にこだわり、そのニュアンスを大切にした曲作りにもその特徴が現れている。

 このファースト・アルバムはロックの王道であるブリティシュ・ロックから多大な影響を受けている。それはハード・ロックからもプログレシブ・ロックからも同等にである。特にこのアルバム・タイトルでもある4曲目の「一触即発」はE.L.Pのハードでスモーキーなー変拍子、レッド・ツェッペリンのジミーペイジ的なハードなギターのリフ、ピンクフロイドの幻想的な空間を作るドラミングやデイブ・ギルモア特有の粘っこいギター・ソロなどが渾然一体と構成された傑作である。また、「ピンポン玉の嘆き」はピンク・フロイドの太陽讃歌のサウンド空間とクリムゾンのエピタフなどで聴けるメロトロンが一体化した非常に幻想的な快作。自分たちが好きなサウンドを下敷きとしながらも、そこに日本語の歌詞を載せることで、新しい独自の音世界を作っている。
 
 私の持っているアルバムは1974年にシングルとして発売された「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」とそのB面「ブエンディア」がボーナス・トラックとして収録されている。この「空飛ぶ円盤に弟が乗ったよ」はイントロにE.L.Pのハードでスモーキーなー変拍子でぐいぐいと聴き手を引き込む手法を使いながら、歌の部分になるとブリティシュ・ハード・ロック的なサウンドで歌い上げる70年代の日本のロックの香りがぷんぷんする作品である。「ブエンディア」は後に四人囃子を脱退することになる森園勝敏が興味を示した南国的なフュージョン・サウンドが展開されている。これは第一期プリズムで聴けるサウンドそのものである。プリズムの原点がこの曲の中にある。

 四人囃子のサウンドはマニアックなオタク音楽としてのプログレではない。本当の意味でプログレスする音楽としてプログレシブ・ロックが存在していた時期に、まさに現役のプログレシブ・ロックとして鳴り響いていた。手探りの中から新しい音楽を創造しようとする姿勢が素晴らしい。

評価:B+α(手応えのある快作品)
( 大庭英亨 2002.11.7)
Katsutoshi Morizono / Vocal,A.Guitar,E.Guitar,S.E.
Hidemi Sakashita / A.Piano,E.Piano,Organ,Mellotoron,Mini Moog,S.E.
Shinichi Nakamura / Bass Guitar,Pedal Bass,Back Vocal,S.E.
Daiji Iwao / Drums,Air-Cymbals,Tubularbells,Tambourine,S.E.         

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